螺旋模様

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act.2

written by  みや




3.





帰国していた椿に就職祝いだと言われ呼び出されたF3の面々と
滋に桜子そしてつくしの6人は道明寺邸のリビングにいた


予定なんかお構いなし有無を言わせない強引な集合に文句を
言っていたF3も今は楽しそうにしている
もちろん桜子も滋も上機嫌で酒を重ねていた





「なんか久しぶりに目の保養をしたって感じですこれで道明寺さんが
 加われば最高なんですけどもうすぐでしたよね?道明寺さんの帰国」


「え?あっそう言えばもうすぐだよね」



「何他人事みたいなこと言ってるんですか
 自分の彼氏が4年ぶりに帰ってくるんですよ」





司が帰国する前につくしがNYに出向く事はみんなには内緒
これは絶対冷やかされるからと言うつくしの意見と
絶対に邪魔されたくないと言う司の意見が一致して決めたこと
つくしは桜子に動揺を見られないようグラスに口をつけた





「牧野〜今度こそがっつりいっとけよ!今時20才すぎて
 処女なんてお前と化石くらいのもんだからな」


「そうそう生きる化石シーラカンスってとこだよな」





久々に聞く総二郎とあきら息の合った掛け合いと笑い声に
混ざってノックの音が響く
遠慮がちに姿を見せた使用人は振り向いた椿にNYから電話が
入っていると伝え頭を下げる





「NY?司だったらここに回してちょうだい」


「いえ、あの・・・奥様からのお電話です」


「お母様から?」





ごめんねと笑顔で席を立った椿は数分後
使用人2人に両脇を支えられリビングに戻ってきた

椅子に倒れこんだ顔からは血の気という血の気が失せ青白い
尋常ではない様子に皆はグラスを置いて椿の元に集まった





「姉ちゃんどうしたんだよ?」


「大丈夫ですか、お、お水持ってきますね」





差し出した手をぎゅっと握られて驚いたつくしが視線を上げると
涙を滲ませた椿の瞳がすぐそこにあってじっと見つめ返してくる





「つくしちゃん落ち着いて聞いてね司が・・・」





司の名前に心臓が跳ね上がる、指先が白くなるほど強くグラスを
握り締めたつくしは息をつめて椿の言葉を待った





「事故に巻き込まれたの・・・・」





小さな悲鳴が上がり誰かが倒れたのがわかってもつくしは動けなかった
しっかりと支えてくれる類の手がなかったら床に突っ伏して
いたのは自分だったかもしれないと思うほど
肺は酸素を求め喘ぎ、心臓は限界を越え脈打っていた





「怪我は・・・・道明寺は無事なんですか?」




「大丈夫よ、司の怪我は大した事ないってでも・・・司をかばった人が
 大怪我を負って意識不明の重態らしいの
 これからすぐにNYに発つわ詳しい事がわかったら必ず連絡する
 大丈夫よ、絶対に大丈夫よ」





最後の大丈夫はつくしに聞かせると言うより椿自身に
言い聞かせているように聞こえた
もう一度つくしの手を強く握りふらりと立ち上がった椿の背中に
むかって黙っていた類が静かに問いかける





「怪我をした人間の身元はわかってるの?」





嗚咽のような声がして小刻みに震え始める優美な背中
皆が息を呑んで見守るなか椿は前を向いたままはっきりと
その名前を口にした





「フランク・ロスマン・・・」





翌日椿から司は心配ないとTELが入ったのを最後にNYからの
連絡が途絶えた
F3が手をつくして調べても情報は完全にシャットアウトされていて
何ひとつ入ってこない


つくしも毎日TELをしてはいるが司の携帯は電源が切られたまま
繋がることはなかった
何もわからない案じるだけの日々はひどく長くそして苦しい




事故の一報を受けてから2週間が過ぎ再び6人が顔を合わせた夜
溜まりかねたつくしは一同を前にしてNYに行くと宣言した

2週間寝ても冷めても頭にあるのは司のことばかり
何もわからないままじっと待つのはもう嫌だった





「行くってお前行ってどーすんだよ」



「何かわかるかもしれない・・・じっとしてられないの」





艶をなくした黒髪、目の下のクマ思いつめた表情を見れば
限界にいることはわかる
ここは行かせてやるべきだろうか目を見合わせた総二郎とあきら
2人が口を開く前に類が動いた






「牧野司は必ず連絡してくるよ」






つくしと類のもとに司から招待状が届けられたのはそれから
さらに2週間が過ぎた日のことだった







4.





遡ること2週間前、犯人逮捕をきっかけにロスマン社は事故について
正式な形で世界に向けて発表していた
逮捕された犯人は事故当時薬物を使用していて錯乱状態だったと言う


事実上ロスマン社の全実権を握っていたフランク・ロスマンの不在は
ロスマン社の経営に大きな打撃を与えた4年前の道明寺財閥と同じように




ニュースでフランク・ロスマン本人の映像を見たつくしは
持っていたカップを床に落とした
映っていたのは昔セントラルパークで会ったあの男性
帰国する日空港まで見送りにきてくれたあの男性だったから






「嘘、あのおじさんが道明寺の・・・・」





その1週間後には道明寺財閥がロスマン社に経営統合を前提とした
資本の提供を申し出たことが報道された


世界的な大企業の同士の経営統合のニュースは世界のメディアで
報道され、ことに日本ではありとあらゆるTV番組がこの件について
連日取り上げコメンテーター同士が討論を戦わせている始末



世間の関心が高まれば必ず飛び出すゴシップめいた噂






様々な噂が流れる中、1番注目を集めている噂は大学卒業を目前に控え
卒業後はすぐにも道明寺財閥総帥を正式に引き継ぐとされている司と
ロスマン家の一人娘の婚約話


ゲストコメンテーターが息巻いて噂の信憑性について語る様子を
ぼんやり見ていたつくしはコメンテーターが取り出した米国の雑誌
に思わず身を乗り出しTVににじり寄った
画面に映っているのはベンチに並んで座る2人の姿を捉えた写真




写真は小さい上に画像も悪い代物だったがつくしには確信があった
ベンチに座り足を組んでいる男性は紛れもなく司本人だと




大丈夫・・道明寺を信じてる


大丈夫、必ず連絡がくるはず




画面が司会者のアップに切り替わるとつくしは電源を落とし
ちらりと頭を掠めた疑念を打ち消すように呟いてバイトに向かった


その後もこの件がTVで取り上げられない日はなかった
それまで知っていると思っていた司の知らなかった一面を
自分の知らない人たちがTVの中で語っているのを見るのは
とても不思議な感覚だった


TVはつくしに道明寺財閥とロスマン社の深い結びつきや
道明寺家やロスマン家の成り立ち現在の状況様々なことを教えてくれる







ロスマン氏は道明寺の命を救ってくれた人

その人の窮地を見捨てるような男は好きじゃない

会社は会社が救う、じゃあ人は・・・・





問いかけては否定して否定しては問いかける
そして今日手元に届いた1通の封書
同封されたものは短い手紙とパーティーへの招待状






『来週NYで総帥就任のパーティーがある
   類にも招待状を送った一緒に来てくれ 司』







総帥就任は日本に戻って1年くらい経ってからと司から聞かされていた
1年も早まった理由は?わざわざ類と一緒に来いと書いてきたわけは?










to be continued...
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