螺旋模様

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act.27

written by  なお*なお




〜 エピローグ 〜





前略



お元気ですか?私と美夕は相変わらず元気でやっています。

東京はこの前、初雪が降りました。
初めて触る雪に美夕は大喜びでした。

そちらはどうですか?
東京とは違って、雪がたくさん積もるのかしら?
今更ながらカナダの冬を待たずに、日本に戻って来た事が悔やまれます。
美夕に、かまくらを作って見せたら喜んだだろうな〜。


もうあれから2年も経ったのですね。月日が流れるのは早いです。
あたしの怪我は、もうほとんど目立たなくなりました。
少し傷跡は残りましたが、後遺症も無く大丈夫です。あの頃の痛みに比べたら、
嘘みたいです。みんなそうやって、忘れて行くのかな。


美夕はこの前歩いたと思っていたのに、あっという間に、お外を走り回るまでに
なりました。
自分の意志で部屋から抜け出して、どこかに行ってしまう事もしばしば。
その度に私は心配して、あちこち探しまわるのですが、なかなか見つかりません。
この前なんか、庭の花壇の中でニコニコ顔で座ってました。
本人はかくれんぼでもしているつもりだったのでしょうか?


美夕はおしゃべりも上手になりました。
最近よく「きんパパのおみせのおすしがたべたい」と言ってきます。
好き嫌いが激しい美夕で、献立にはいつも頭を悩ませているのですが、
あの時食べたお寿司が、よほどおいしかったのでしょう。
仕方なく代わりの物を用意するのですが、「イヤ」とかんしゃくをおこして
取り合ってくれません(誰に似たのか…)。
でも、そちらのお店にはなかなか行けないですね。遠くて…。


そうそう、手紙を書くと旦那様がヤキモチを妬かないかという質問ですが、御答えします。
何も言いません。意外でしょう?
心の底ではヤキモチを妬いてるみたいで、手紙を書いていると、とたんに不機嫌に
なったりするので、表情からバレバレなんですが、本人なりに我慢してるみたいですよ。
すごい進歩でしょ?
本人は忘れたと言っているけど、あの時に私に言い残した事を覚えてるんじゃないかな?
会社では威張りまくっている総帥ですが、金さんにだけは、今でも頭が上がらないみたいですよ。


美夕の戸籍の事ではありがとうございました。
思ったよりも大変で、このまま変えなくてもいいかな…なんて思っていたのですが
(金さんには迷惑ですよね。ごめんなさい)、何気ない美夕の「きんパパ」の一言が
彼の闘志に火をつけてしまったようです。
仕事を全部放り出して、しばらくは戸籍のことに掛かりっきりでした。
秘書さんは「これが片付かないと総帥が仕事をしない」としばらく嘆いてました。
どんどんやつれてしまって、申し訳ないくらいに。
それにしても、よほどショックだったらしく、夜中に美夕が寝静まった後、
耳元で「司パパ…司パパ…」と呪文のように呟いてました(司には内緒でお願いします)。
娘に名前で呼ばれたいのかしら?


色々お世話になったのに、また戸籍の事で時間とか手間とか取らせてごめんなさい。
というか、金さんにはずっと迷惑かけてお世話になりっぱなしだったね。
ありがとうって何回言っても、きっと足りないけど、ありがとう。本当にありがとう。
カナダを発つ日、繰り返し頭を下げる私に、「幸せになることが恩返し」って
言ってくれた金さんの言葉、一生忘れません。


金さん。私、幸せになるね。


美夕の写真を2枚同封します。すましているのと、ふざけてるのと。
すましていると美人さんなのですが、いつもはふざけて笑っている顔の方が多い美夕です。



草々




20XX. 1. 31



道明寺 つくし











― 了 ―










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